【Googleデータポータル入門番外編】データを可視化に向いた形式に変換する
Googleデータポータル入門第1回とGoogleデータポータル入門第2回でデータポータルへのデータの連携と簡単な分析について説明しました。
その際、同じような可視化の手順を繰り返してグラフを作成しました。
今回の記事では元になるデータの形式を変形することでこのような繰り返しの手間を省く方法を説明します。
今回説明する内容はプログラミング言語でデータ処理を行うのがメインの多少発展的な内容ですが、
「コンピュータが処理しやすい形でデータを保存する」という汎用性の高い内容でもあります。
ぜひ目を通していっていただければと思います。
データの形式
前回の記事で動画視聴サービスごとに棒グラフを作成する際、各視聴サービスごとに同じ操作(指標の作成、フィルタの適用、グラフの作成)を繰り返してグラフを作成しました。
このように同じ作業を繰り返すのは単純にめんどくさいだけでなく、思わぬミスが生じる可能性があるのでなるべく避けたいところです。
では、なぜ同じ作業を繰り返す羽目になったのでしょうか?
それは映画タイトルを視聴できるか否かが 「各視聴サービスごとに列として保存されていた」 ためです。
元のデータは以下の図のようになっていました。
各視聴サービスの列が存在し、各々で視聴可能(1)か視聴不可能(0)かがデータとして表されていますね。
この形式は人の目では見やすいのですが、コンピュータに処理させようとした際には 「各列ごとに同じ処理を繰り返す」 という必要があり、ちょっと面倒になります。
そこで、列ごとに存在している視聴サービスごとの情報を一つの列にまとめてしまうことを考えます。
イメージとしては、以下のような形式に変形します(というか、この後行う処理で目指す形式がこれです)。
列として横に伸びたデータを行として縦にまとめてしまうというイメージですね。
そのためか、元のデータのような列方向に情報が展開されたデータ形式は 横持ち形式 や wide format 、変換後の行方向に情報がまとめられたデータ形式は 縦持ち形式 や long format などと呼ばれることもあります。
縦持ち形式は「コンピュータが処理しやすい整理されたデータ」という意味で、 tidy data と呼ばれることもあります。
tidy data の考え方はデータを扱う際にとても有用な考え方なので、もしご興味があれば こちらのサイト から詳細を一読してみてください。
縦持ち形式のほうがなぜコンピュータで扱いやすいのかは言葉で説明されるだけではちょっとわかりにくいかもしれません。
こればっかりは「やってみると分かる」としか言えない部分でもあるので、実際にデータを変形してみて、データポータルで可視化してみます。
(おそらく皆様が使い慣れているエクセルでは横持ち形式のほうが何かと便利だったりします。とはいえ、エクセルは ピボットデーブル で簡単に縦持ち→横持ち変換ができるので、データ自体は縦持ちで保存しておき、必要に応じてエクセルで横持ちに変換して可視化、というようなワークフローのほうが様々な状況に対応できると思います。)
Pythonで横持ち形式を縦持ち形式に変換する方法
縦持ち→横持ち変換はエクセルやGoogleスプレッドシートのピボットテーブルを使えば簡単にできるのですが、
横持ち→縦持ち変換は自分が調べてみた限り何らかのプログラミング言語を用いる必要がありそうです。
そこで今回はデータ分析用のライブラリが揃っているPythonを用いて変換を行います。
PythonはGoogleが無償で提供している Colaboratory というサービスを通して使用することができます。
ColaboratoryはGoogleドライブ上のデータを読み込むこともできるので、データをGoogleドライブにアップさえすれば、
面倒な環境構築作業なしでPythonを通して様々なデータ処理、データ分析が行えます。
(じゃあColaboratoryで分析すればデータポータルいらないじゃんか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、データポータルではウェブ上でグリグリ動かせたりするレポートを簡単に作れるので、Pythonで書くより楽にレポートが作れるという利点があると思います。)
それではColaboratoryを使ってデータを変形してみましょう。
Colaboratoryのセットアップ
Colaboratoryのセットアップは非常に簡単です。
Googleドライブ上で右クリック→その他→Google Colaboratory を選択すれば使用できるようになります。
Google Colaboratoryがメニューに表示されない場合は、下の “アプリを追加” から “Colaboratory” を検索してアプリを登録してください。
画面上部でファイル名が “無題のノートブック.ipynb” となっていると思うので、任意の名前を設定してください。ここでは “melt_data.ipynb” としました。
ColaboratoryとGoogleドライブを接続する
ColaboratoryでGoogleドライブ上のデータを読み込めるようにします。
図のように、Colaboratoryの画面左側から “フォルダ” マークをクリックします。
次に、現れた画面からフォルダのマーク内にGoogleドライブのマークが書かれたところをクリックします。
これでGoogleドライブと接続されます。場合によっては接続に時間がかかることもあります。
接続されると、 “drive” → “MyDrive” 以下に自分がGoogleドライブに作成したフォルダの一覧が見られるようになります。
ここからデータの格納先を確認しておきます。
これでColaboratoryを使用する準備は完了です。
Colaboratoryでデータ形式の変換スクリプトを書く
それでは、Colaboratoryの中央部分のコードエディタ(1つ1つのブロックをセルと呼びます)にデータを変換するプログラムを書いていきます。
まずはデータを読み込んで中身を確認してみましょう。
import pandas as pd
df = pd.read_csv("./drive/MyDrive/<データを格納しているフォルダ>/MoviesOnStreamingPlatforms_updated.csv")
df.head()
1行目でデータ処理用のライブラリ “Pandas” を読み込み、2行目でデータを読み込み、3行目でデータの初め5行を表示しています。
このコードを実行すると、以下の出力が得られます。
次に、データを変形し、その結果を確認します。今回はテストとして全データは使わず、映画タイトルとIMDbの評価点、各視聴サービスごとの視聴可能状況のみを用います。
use_cols = ["ID", "Title", "IMDb", "Netflix", "Hulu", "Prime Video", "Disney+"]
id_vars = ["ID", "Title", "IMDb"]
melted_df = pd.melt(df[use_cols], id_vars=id_vars, var_name="Services", value_name="viewable")
melted_df = melted_df.sort_values(["ID", "Services"]).reset_index(drop=True)
melted_df.head(10)
1行目では今回使用するデータの列を指定しています。2行目では縦持ちに変換 しない データの列を指定します。
今回縦持ちに変換するのは各視聴サービスごとの視聴可能状況のみなので、それ以外のデータ列を2行目で指定しています。
3行目が今回のメインとなる部分です。 melt
関数を用いることで列方向に展開されたデータを1つの列にまとめ直しています。melt
関数についてはこちらで詳しく解説されています。整然データ(Tidy Data)への変換をpandasでやってみるvar_name
で視聴サービスの名前を格納する列名を Services
とし、 value_name
で各視聴サービスごとの視聴可能状況を viewable
という名前にしています。
Pandasを使っているのでメインはたった1行だけになってしまいました。
4行目は必須ではないのですが、IDの数字順と視聴サービスのアルファベット順でデータを並べ替えて多少見やすくしています。
最後に10行を出力しています。結果は次のようになります。
さて、これでデータの変形自体はできたので、変形したデータを再度Googleドライブに出力しましょう。
melted_df.to_csv("./drive/MyDrive/<データを格納しているフォルダ>/movies_melted.csv", index=False
今回はデータと同じフォルダに movies_melt.csv
という名前で保存しました。
データポータルで変換後のデータを可視化
それでは、変換後のデータをデータポータルに接続して可視化してみましょう。
データの接続は Googleデータポータル入門:第1回 を参照してください。
また、可視化の方法はGoogleデータポータル入門:第2回 を参照してください。
今回注意すべきなのは、各視聴サービスの視聴可能状況は、 データ列 Services
と viewable
の2つの組み合わせで表現される 、という点です。
そのため、データポータルの可視化の際はディメンションに Services
と viewable
の2つを指定します。viewable
を日本語にした指標を作成し、 IMDb
の上位10%に絞り込むフィルタを作成した結果、以下のようなグラフが作成されました。
各視聴サービスごとに同じ可視化の手順を繰り返すことなく、1つのグラフですっきりと目的の集計を表現できました。
最後に
これで今回の内容は終了です。
Google Analyticsなど、既存のサービスは大抵データを今回説明したようなコンピュータが扱いやすい形式で保持しているので、
既存のサービスを使う限りはデータ形式についてあまり意識しないで済むかもしれません。
ただ、自分でデータを色々なところから取得して分析や可視化、レポーティングを行う際は今回説明したようなデータの形式を意識してみると、
かかる時間が短くなったりミスを減らせるようになったり色々メリットがあると思います。
皆様も何かしらデータに触れる際はそのデータの形式に少し注目してみてくださいね。